お客様の声

  • 透析医療における電子カルテ

    透析医療は、その反復性・継続性という特殊性もあり、他医療部門に先駆けてITシステムが開発・市販され、改良を加えられています。利点については業務の効率化・ミスの減少に加え、「複数部門での患者情報の共有化」などが報告されています。しかし『電子カルテ』の形式、すなわち平成11年厚生省からの「診療録等の電子媒体による保存について」における3条件、「真正性・見読性・保存性」を満たしているシステムは、これまでに存在しませんでした。

    当院で運用しております透析専用電子カルテ、『パピルス』を開発するに当たっては、2001年よりMBTec社と入念な打ち合わせを致しました。現在市販され、比較的廉価であり有効に活用されている透析専用ITシステムは、バイタルサインも含めたデータ管理からオーダリング・服薬状況まで網羅し、いくつかの欠点もいずれ解決されると思われます。あえてこれらシステムから脱却し、電子カルテ化する意義を、私達は『2号用紙の共有化』と設定しました。個々の患者における数値化・画像化できない情報・それに対するアセスメントと計画を、複数部署で共有する事は、スタッフ⇔患者に加えてスタッフ⇔スタッフのリアルタイムで細かな情報共有ができ、各患者把握ネットワークが飛躍的に拡大する事が期待されます。

    一方、守秘の意識に関しても各スタッフのモラルと思いやり・センスが問われる機会となります。『ひとりの患者情報の全てを全スタッフが有し、必要な情報だけを抽出して安全管理と患者サービスに活用する』事は、ITとは別次元の問題です。例えば、透析中に血圧が下がり気分不良となった患者が、帰りがけに受付で「今日は大変でしたねえ」と言われれば、患者は『そんな事までなぜ事務が知っているのか?』と、不快に思うかも知れません。しかし次回透析来院時に受付で、「今日は顔色がいいですね。このあいだは御気分が悪そうで心配しました」と言われれば、患者は喜んでくれるに違いありません。このように、透析患者を十分に理解し思いやる人の教育が、患者や家族の信頼につながり、最終的に電子カルテを成功させる鍵と思われます。

    最先端のIT技術の一方、透析医療の特殊性について考えてみますと;(1)血液体外循環という高リスク、週3回の高頻度で継続せねばならない点、(2)患者と医療機関・スタッフとの関係が密接である点(週3回、1回4-5-時間)、(3)患者・家族が患者情報を多く有している点、(4)患者の多くが精神的問題を抱えている点、などのウェットな部分が挙げられます。特に精神面では、透析患者はしばしば依存的な面と離人的な面、両面を合わせ持っています。つまり「知ってもらっている安心感」と、「知られている不快感」です。よって、迅速な情報共有により透析患者に良質で安心できる医療を提供すると同時に、透析患者の持つ閉鎖的な部分・ウェットな部分を思いやる意識を再考する必要があります。

    医療法人衆和会 理事長 船越 哲

    http://www.nagajin.jp
  • 透析センター統合型電子カルテ Synapseのすすめ

    当院に赴任するまで、約10年にわたり、F社の電子カルテとN社の透析装置監視プログラムを使用していました。いずれも、それなりに練られたソフトで気に入っておりましたが、業務内容がほとんど医師のみに限られ、しかも2つを繋ぐことはできませんでした。

    MBテック社のSynapseは透析センターに特化した電子カルテシステムです。

    毎回の透析記録、約2ヶ月間の経過表、検査結果が簡単に表示されます。知りたいdataや既往歴などをグループごとに次々にめくることも可能です。 医師の診療録記載やオーダーのみにとどまらず、看護師、工学士、栄養士、看護助手、事務とすべての職種のcoworkerが、dataを共有し、問題点をあげて解決へと導くことを目指しています。

    導入にあたり、最も心配しましたのは看護師、特にその日のリーダー業務を電子カルテ上に乗せることができるか否かということでした。基本的には紙カルテでの業務プロセスを踏襲しており、一度使い出すと、紙カルテには二度と戻りたくないとの評価を看護師から得ています。電子カルテの弱点と感じていたのは、一目でその患者さんの全体像を把握しにくいという点でした。既往歴欄にショートコメントをつけることによりきわめて明快にすることができました。

    注射や処置を記入してある個人カードが週単位になっている点など、長時間作用型EPOが登場してくると不都合が生じうると考えられますが、今後も進化を続け解決されていくものと確信しています。

    医療法人眞仁会 横須賀クリニック 小澤 潔

    http://www.shinjinkai.or.jp
  • 電子カルテをリハビリの質向上に活かす

    鵜飼リハビリテーション病院では平成12年の開設以来“患者様第一主義”を合言葉に、地域の方々から常に信頼・評価される病院を目指し、技術研究、業務改革、職員教育等に力を注いできました。回復期病棟での医療の質は、情報共有とチーム連携のレベルに大きく左右されます。また、患者様に安心して気持ちよく入院生活を送っていただくために必要な情報をタイムリーにお伝えすることも大切です。回復期リハの期待が高まる中、「情報の共有と活用」のレベルを一層進化させるためのツールとして、電子カルテ導入の検討を開始しました。

    病院の電子カルテ普及率は約14%(18年7月の日本経済新聞より)と一般社会のIT化と比べてまだまだですが、当院では平成17年4月に電子カルテの検討を始め、7月には、初台リハビリテーション病院での実績を持つMBテック社と電子カルテシステムを構築して いくことを決定しました。それから1年3ヶ月をかけ18年10月に稼働開始しました。

    これだけの時間をかけたのは、当院のシステム導入にあたっての「開発コンセプト」が、「業務改革」即ち、単に「紙」から「コンピューター」へ変えるのではなく、今までの仕事のやり方が本当にベストか?に立ち返り、病院機能の本流(入・退院管理、評価、処方、リハビリ・看護・ケア、栄養管理等)の総点検、患者様に直接関われる時間を増やすため、記録や管理・事務の簡素化、患者様に喜んでいただける情報サービス、などについて、徹底的に議論を重ねてきたからです。加えて、少しでも「クリック」の回数を減らすなど操作性の向上にも知恵を絞りました。

    「1年以上にわたるMBテック社の強力なサポート」のおかげを持って当院オリジナルの電子カルテシステムが構築できました。 現在では、電子カルテシステムによる業務も軌道に乗りつつあり、これからも、「最強チームアプローチ」のためのツールとして、改善を加えていきたいと考えております。

    全ては患者様のために

    電子カルテにはさまざまな機能が備わっています。患者さんにとってより質の高い医療サービスを受けていただくための情報活用が可能です。具体的な例として・・・

    患者さんのADL(日常生活活動)状況や全身状態の変化について、従来であれば口頭での伝達が中心でしたが、現在ではパソコンを開いただけで、情報が表示されるため、必要な時に確実に伝達事項が伝わります。すべてのスタッフが容易に情報を収集できる ため、より安心・安全な入院生活を送っていただけます。

    入院中はリハビリ、入浴、外出などさまざまな予定が組まれます。電子カルテによって1週間分のスケジュール予定表を事前に作成し、患者さんやそのご家族に提示しています。予定を事前に把握していただくことで、余暇時間の過ごし方も計画しやすくなり、有意義に時間を使っていただくことができます

    今後の展望

    医療法人珪山会では鵜飼病院、老人保健施設第一若宮、大門訪問看護ステーションといった回復期を退院された患者様をサポートするための施設も併設しています。今後は院内の情報共有にとどまらず、退院後のサポートにおいても今以上に効率的に情報共有できる仕組みを検討していきたいと考えています。そのためにもMBテック社の今後の展開に期待します。

    医療法人珪山会 理事長 鵜飼 泰光

    http://www.ukaireha.jp